2020年度若手技術セミナー

本領域の研究者40名(登録者数)によるオンライン会議を開催しました。

日時:2020年8月28日
場所:Zoom会議

技術セミナーの資料はこちら(領域内メンバー限定)。


図1 技術セミナーの画面。左:柚木克之氏、右:島村徹平氏。



図2 集合写真。


開催報告

 新学術領域「代謝統合オミクス」は今年で4年目を迎え、2020年4月からは新たな公募班のメンバーとともに再スタートをきった。しかしながら、昨年度末から世界的に流行している新型コロナウイルスの影響により、国内外の研究集会は軒並みキャンセルとなり、本領域においても5月に予定していた毎年恒例の若手合宿が直前で見送りになるなど、今日も予断を許さぬ状況が続いている。こうした事態は、研究室に所属する学生や、活発な議論を渇望する若手研究者にも、少なからず悪影響を及ぼしていると思われる。セミナー会場の雰囲気や講演の気迫を肌で感じることは、研究のモチベーションを維持する上でも大切であるが、その機会がほとんど失われている。

 このような中、若手会の幹事一同は、オンラインセミナーを開催することで、学生や若手研究者を刺激し、オミクス解析の最先端に触れる機会を設けたいと考えた。また、領域の新規メンバーを含め、参加者が自由に交流できる場として、セミナー後のオンライン交流会を企画した。
 会議のテーマは、「ウェットとドライの融合法」とし、代謝アダプテーションの解明に向けて最先端の研究を行っておられる柚木克之氏(理化学研究所、チームリーダー)、島村徹平氏(名古屋大学、教授)のお二人に、技術セミナーでの講演をお願いした。ありがたいことに、お二人とも快諾していただけたばかりか、詳細な資料まで準備していただき、参加者へ事前に配布することができた。

 柚木氏の講演「論文に書いていないトランスオミクスのコツ −背後にある考え方、実験デザイン、地味な技術−」では、実験、数理、知識データを活用したトランスオミクスの方法について、主結果だけでなく、地味な手作業の部分に関しても率直な内容をお話しいただいた。また、細胞応答に関わるオミクス間の因果推論を推理小説における探偵の謎解きに例える話や、生物学的知見の発見方法を大航海時代の航路発見のプロセスに例える話など、専門家だけでなく、非専門家にとっても分かりやすい内容であった。

 島村氏の講演「今こそ知りたい!行列因子分解 〜ゼロから始めるマルチオミクス解析〜」では、データの特徴を活かした行列分解の一般論にはじまり、トピックモデルを応用した最適近似の方法、得られた結果の生物学的解釈などが、疾患と腸内細菌叢の関連分析とともに紹介された。また、ソフトウェアを用いた解析の実演では、データ処理のプロセスや出力結果を視覚的に分かりやすく説明していただいた。これは、聴講者にとって大きな理解の助けになったことと思う。どちらの講演でも活発な議論が交わされ、技術セミナーは大変有意義なものとなった。どのような質問にも丁寧に回答いただいた講演者のお二方に深く感謝する。

 夕方からは、学生・若手研究者・新規メンバーによるフラッシュトークのセッションを開き、お互いの研究内容などを知る時間を設けた。さらに今回初めての試みとして、Zoomのブレイクアウトルーム機能を利用したオンライン交流会を行った。これは、参加者を幾つかの独立した仮想部屋に少人数ずつグループ分けする機能であり、部屋ごとに会話をすることが可能となる。部屋間の行き来も自由である。幹事の間で、事前に二度のリハーサルを行ったおかげで交流会はスムーズに進行し、好評を博した。

 開催後のアンケートでは、9割以上の参加者が、技術セミナーは「役に立った」と回答していた。多くの参加者にとって本会が有意義なものになったことは、大きな収穫と言える。さらに、本会が今後の研究の一助となれば、幹事一同として大変幸いである。
 最後になったが、活発な議論に協力いただいた講演者、学生・研究者、および運営に関わっていただいた皆様に、心から感謝の意を述べ、若手会報告の結びとする。


運営委員(順不同)
市川彩花(阪大)、岡橋伸幸(阪大)、和泉自泰(九大)、梅山大地(理研)、大野聡(東大)、堀之内貴明(理研)、飯田渓太(阪大)

文責:飯田渓太
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